受託者の報酬額について

家族信託の契約書に「信託報酬」について報酬の金額や算定方法が定められていれば、それに従い報酬を受領することになります。(信託法54条1項)
これに対して、信託行為(信託契約書等)に信託報酬の条項を設けなければ、受託者は無報酬で信託事務を行うことになります。

家族信託における信託報酬の額に、法的な規制や相場等はありません。委託者と受託者が合意のうえ信託契約書にその旨を設けることで、理論上はいくらでも構いません。

しかし、報酬額が極端に多い場合、信託報酬という名目のもと、実体は「贈与」ではないかと税務署から指摘されないように、信託財産の規模や信託事務の業務量と報酬額とのバランスを適正に保つことが大切です。
報酬額の設定方法として、毎月決められた金額を設定する「定額報酬」と信託財産から得られる利益のうち一定割合を報酬とする「定率報酬」があります。また支払い方法は、毎月でも一年まとめてなどでも構いません。
実務上、定額報酬の場合ですが、受託者は成年後見人と同じような役割を果たすことから、職業後見人の相場が参考になります。家庭裁判所の報酬付与審判の相場は月額2万~6万円程度です。
一方、定率報酬は、収益物件を信託財産に入れて賃貸管理もふくめている場合などに採用されています。その場合は不動産管理会社に払う管理委託手数料が参考になります。毎月の賃料収入の5~10%を管理委託手数料としているところが多く、受託者は、管理会社と同じように、賃料の受領・督促をし、賃貸借契約の締結等をおこないます。