家家族信託の終了はどのような場合ですか?


 
家族信託の終了は、おおきくは4つになります。
①信託法上の終了事由
②委託者・受益者の合意により終了
③信託契約で家族信託の終了事由を定める
④終了事由がない場合の途中解除

①信託法上の終了事由
信託法上、複数の法定終了事由が規定されており(信託法163条など)、これら終了事由の発生をもって信託は終了となります。

(信託の終了事由)
1 信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき。
2 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が一年間継続したとき。
3 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が一年間継続したとき。
4 受託者が第52条(第53条第2項及び第54条第4項において準用する場合を含む。)の規定により信託を終了させたとき。(信託財産が、受託者の支出した費用の償還に不足している場合など)
5 信託の併合がされたとき。(複数の信託が合わさって一つの信託となり、併合前の従前の信託は終了するというもの。)
6 第165条又は第166条の規定により信託の終了を命ずる裁判があったとき。
7 信託財産についての破産手続開始の決定があったとき。
8 委託者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた場合において、破産管財人・再生債務者・管財人による信託契約の解除がされたとき
9 信託行為において定めた事由が生じたとき。

②委託者・受益者の合意により終了
委託者と受益者が合意する場合には、いつでも家族信託を終了させることができます(信託法164条1項)。

③信託契約で家族信託の終了事由を定める
家族信託の終了事由は、信託契約の中で定めておくことも可能です(信託法163条9号)。
契約上の家族信託の終了事由は、家族信託の目的に応じて定めましょう。
たとえば認知症対策であれば、本人(受益者)が死亡した時には、それ以上家族信託を存続させておく必要がありません。もちろん、認知症対策以外に、死後の財産管理についても目的としている場合はこれに限りませんを。この場合には、受益者の死亡を家族信託の終了事由とします。
また、幼い子ども(孫など)のための財産管理を目的とする場合は、その子どもが一定の年齢(成人など)に達した場合には終了させるのが一般的です。
このように、信託契約を作成する際に、家族信託の目的に応じた終了事由を規定しておく必要があります。

④終了事由がない場合の途中解除
家族信託の終了事由がなく、かつ委託者と受益者が家族信託の終了に合意していない場合でも、一定の要件を満たす場合は家族信託を終了させることができます。

(1) 特別の事情による信託の終了と、(2) 公益の確保のための信託の終了の2通りがあります。
(1) 特別の事情による信託の終了
信託契約締結の当時予見できなかった特別の事情により、信託終了が受益者の利益に適合するに至ったことが明らかである場合には、委託者・受託者・受益者からの申立てにより裁判所が信託の終了を命ずることができます(信託法165条1項)。
「特別の事情」の例としては、「受託者と受益者の関係性が極端に悪化した場合」「 認知症対策を家族信託の主な目的としていたところ、受益者の認知症が劇的に改善した場合」などがあげられます。

(2) 公益の確保のための信託の終了
公益を確保するため、信託の存立を許すことができないと認めるときは、申立てにより裁判所が信託の終了を命ずることができます(信託法166条1項)。
「公益の確保」を理由とする信託の終了が命じられるには
[A]不法な目的に基づいて信託がされたとき  脱税や債務逃れなどを目的として、家族信託が悪用された場合などが該当します。
[B]受託者が、法令もしくは信託行為で定めるその権限を逸脱し若しくは濫用する行為または刑罰法令に触れる行為をした場合において、法務大臣から書面による警告を受けたにもかかわらず、なお継続的にまたは反覆して当該行為をしたとき
公益の確保のための信託の終了を申し立てられるのは、法務大臣・委託者・受託者・信託債権者・その他の利害関係人です。