「遺言による信託」と「遺言信託」の違いはなんですか?

民事(家族)信託でいう「遺言信託」とは、遺言によって法律上の「信託」をするものです。信託銀行での「遺言信託」は、「遺言書」の保管等のサービスをパッケージにした商品名です。「信託」という言葉が使われていますが、法律上の「信託」とは無関係です。
一方、民事信託・家族信託でいう「遺言信託」とは、遺言によって法律上の「信託」をするものです。以下、もう少し詳しくご説明いたします。
「信託」とは、自分の持っている財産を、誰かに「信じて託す」という財産の管理方法の1つのです。例として父(委託者)が自分自身(受益者)のため、子(受託者)に財産を託したうえで管理を任せるといったものです。この信託をする方法には3つあります。①契約による信託 ②遺言による信託 ③自己信託(信託宣言)

①契約による信託は、父(委託者)と子(受託者)との間で契約をすることによって成立します。
②遺言による信託は、父が遺言で「私が亡くなったら子を受託者として所有する不動産を信託する」と定めておく方法で、父が亡くなったタイミングに信託の効力が発生します。
③自己信託(信託宣言)」は、父(委託者)が自分自身を受託者として信託するという特殊なものです。
財産をもらった者(受益者)自身の手元にその財産がないため、浪費癖のある子を受益者にするケース、認知症により自分で財産管理能力のない配偶者を受益者にするケース、障害を持つ子を受益者にするケースなどで活用されています。
この場合、要件を厳格化ししており(1)公正証書等の公証人の認証を受けた書面(信託法4条3項)。(2)受益者として指定された第三者に対して、確定日付のある書面により信託内容を通知すること(信託法4条3項2号)。以上の2つの方法があります。

この3つの方法のうち、「②遺言による信託」 のことを、民事(家族)信託では「遺言信託」と呼んでいます。

一方で信託銀行の「遺言信託」とは、下記の3つをパッケージにした商品の名前です。①遺言書作成のアドバイス ②作成した遺言書の保管 ③遺言執行遺言を作成したい方が信託銀行に「遺言書」を託し遺言執行までをお願いするといった中身の遺言に関するサービスで法律上の「信託」はでてきません。

「遺言信託」という言葉が2つ意味で使われているので少しややこしいのですが、「遺言信託」という言葉がでてきたら、どちらの意味で使われているのかを意識していただければと思います。