動画や音声の遺言は有効ですか?

録音や録画等のデータは、法律で定められた遺言の形式には当てはまりません。つまり、ボイスレコーダーやスマホ・ビデオカメラなどで撮影・録音した音声や動画は遺言としての法的な効力を持ちません。しかしながら、法的な効力はないとしても、録音や録画等のデータを残しておくことに全く意味がないわけではありません。録音や録画等の記録を残しておくことで後の「争族」を回避するための有効な手段となります。ひとつは、遺言者が、遺言書作成の経緯などを説明した録音や録画等のデータがあれば、書かれた遺言書について、遺言能力があったことや偽造でないこと、加えて誰かの言いなりで書いたのではないことなどを立証する証拠になります。2つ目に動画等は受け取る相続人等の方たちに与える印象が大きく、遺言書の内容に不満を持つ相続人を説得する材料になります。もし将来、相続人間での紛争が見込まれるばあいには、遺言書の作成にあわせて録画等で相続人へのメッセージをデータとして残しておくのも一つの手段です。 もし、遺言書がなく、録音や録画等のデータだけが残っていた場合は、録音や録画のデータ自体は法的に有効な遺言ではありませんので、相続人はその遺言に従う必要はありません。相続人間で話し合い、遺産分割協議によって遺産の分配をおこなうことになります。その場合、法的には無効であっても、録音や録画で残された遺言者の意思を尊重し、遺言の内容に沿った遺産分割を成立させることも可能です。こういった側面から考えると、争族を防ぐ事も考え一度録音や録画等で相続人にメッセージを残しておくことも検討しても良いかもしれません。