住宅を購入し不動産を取得した場合は、不動産取得税が課税されます。
ただし、不動産を相続によって取得した場合、不動産取得税は非課税になります。これだけだと簡単なナノですが、遺言で取得した場合や贈与で取得した場合については、不動産取得税は課税されます。
ここでは、不動産の相続においてどのような場合に不動産取得税がかかる、かからないかについて解説し、加えて、税額の計算方法などについても説明していきます。
また、不動産を相続したときに不動産取得税以外に発生する税金も紹介します。
1不動産取得税について
不動産取得税とは、戸建てやマンション、新築や中古にかかわらず、住宅を購入し不動産を取得した全ての人を対象に課せられる地方税で、取得した建物と土地それぞれに課税されます。
有償・無償の別、登記の有無にかかわらず課税となります。不動産を取得したときに一度だけ支払う税金になります。
不動産取得税は、売買、贈与、交換、建築(新築、増築)等の場合で、相続の場合には不動産取得税は課税されません。
以前は、不動産を取得したときは、所定の期日までに都道府県に不動産取得税の申告をすることとされていました。しかし、令和5年4月1日以降は、登記の申請を行えば原則として不動産取得税の申告は不要となりました。
2.相続の場合、不動産取得税は非課税
不動産を相続した場合は、不動産取得税は課税されません。
不動産を相続すると相続税が課税される場合がありますが、不動産取得税と相続税は異なる税金であり、不動産取得税が課税されるかどうかは、相続税の課税の有無とは関係ありません。
ご家族の方が亡くなり、相続で不動産を取得された場合の多くはここに該当し、不動産取得税はかからないと考えてください。次に不動産取得税が発生する例外について解説していきます。
3.相続で不動産取得税が課税されるケース
不動産を「相続」ではなく、「遺贈」により不動産を取得した場合は、不動産取得税が課税されます。
詳しくは後述しますが、遺贈のうちの「特定遺贈」の場合にフォ動産取得税が課税されます。
3-1.特定遺贈の場合
相続人以外の人が遺言で指定された不動産を譲り受けた場合は、不動産取得税が課税されます。
遺言で相続人以外の人に財産を譲り受けることを「遺贈」といいます。遺贈とは、遺言によって、相続人だけでなく、相続人以外の第三者にも財産を譲ることができる制度です。
そして、遺贈には2つの方法があります。特定遺贈と包括遺贈です。
- 特定遺贈:「Aに自宅不動産を遺贈する」というように財産を指定する遺贈
- 包括遺贈:「Aに財産の2分の1を遺贈する」というように割合を指定する遺贈
相続人以外の人が特定遺贈によって不動産を取得した場合は不動産取得税が課税されますが、包括遺贈によって不動産を取得した場合は相続人と同一の権利義務を有することから課税の対象にはなりません。
なお、相続人が、特定遺贈又は包括遺贈により不動産を取得した場合はいずれにおいても不動産取得税はかかりません。
遺贈の方法・遺贈の相手と不動産取得税の関係をまとめると、次の表のとおりになります。
遺贈の方法・遺贈の相手 | 相続人 | 相続人以外 |
特定遺贈 | 非課税 | 課税 |
包括遺贈 | 非課税 | 非課税 |
3-2.死因贈与の場合
死因贈与で不動産を譲り受けた場合も、不動産取得税が課税されます。
死因贈与は、生前のうちに贈与者と受贈者が合意して契約を締結することで、受贈者に財産を渡すことができる方法です。 未成年者であっても親権者の同意で契約できることや、受贈者が法定相続人でなくても可能でありますが、遺贈との大きな違いは遺贈が財産を渡す側からの一方的なものに対し、死因贈与は当事者双方の合意が必要となります。
たとえば、祖父が孫に「私が死んだらこの家をあげよう」と伝えて、孫が「ありがとう、もらいます」と受諾すれば死因贈与契約が成立します。
死因贈与は遺贈の規定が準用され、贈与税は課税されず、相続税の課税対象となります。
繰り返しになりますが、死因贈与で不動産を譲り受けた場合も、不動産取得税が課税されます
3-3.生前贈与の場合
相続対策として生前贈与が行われる場合がありますが、生前贈与で不動産を譲り受けた場合は、不動産取得税が課税されます。
生前贈与も、通常の贈与と同じように不動産取得税の課税対象になります。
3-4.相続時精算課税制度で生前贈与した場合
相続時精算課税制度を適用して不動産を譲り受けた場合も、不動産取得税が課税されます。
相続時精算課税制度で贈与された財産は、最終的に贈与者が死亡したときに相続税の課税対象になります。
しかし、不動産取得税については相続税の課税の有無とは関係なく、対象の不動産が贈与されたときに課税されます。
※※参考 今後ここに相続時精算課税制度のリンク
.相続登記完了後に遺産分割のやり直しをした場合
相続人で遺産分割協議を行い、相続人が不動産を取得した場合は不動産取得税はかかりません。
もし、遺産分割協議が成立、相続登記後に再度遺産分割協議をやり直しをした場合には不動産取得税は課税されるのでしょうか。
これについては、“相続人全員の合意で、遺産分割協議および不動産登記をやり直す限り、再分割による不動産取得も“相続による取得”とされ、不動産取得税は課されません”としている意見とそれを認めた最高裁判例があるようです。
一方、一部の専門家からは、「相続登記完了後の再分割による名義変更は、相続人間での財産の“贈与”や“譲渡”とみなされ、不動産取得税も課税される可能性がある」とされています。加えて贈与税なども発生する例も指摘されています。
不動産取得税は課されないとする最高裁判例も、遺産分割協議のやり直しが、当時税理士の間違いに起因するものだった等個別の事情を考慮した内容であるため、遺産分割協議のやり直しによって不動産取得税は発生する可能性があるものとして慎重に進めるべきと判断します。
4.不動産取得税の計算方法
不動産取得税が課税される場合の税額の計算方法を解説します。
不動産取得税の税額は、次の式になります。
不動産取得税=課税標準(固定資産税評価額)×税率
税率について
・土地、住宅用の建物 :3%(令和9年(2027年)3月31日までの特例)
・店舗・事務所など住宅以外の建物 :4%
主に住宅を取得した場合は、軽減措置により減額される場合があります。
不動産取得税は、不動産の売買代金ではなく、固定資産税評価額をもとに計算するため、無償で贈与された不動産についても税額が発生します。
5.不動産取得税の軽減措置について
不動産取得税には、さまざまな軽減措置があります。
ここでは、遺贈や生前贈与などで不動産を取得するときに適用できるものを中心に、不動産取得税の軽減措置を簡単にご紹介します。
5-1.住宅を取得した場合の軽減措置
自分が住むための中古住宅を取得した場合は、床面積や耐震性が一定の要件を満たしていれば、不動産取得税の課税標準が軽減されます。
具体的には、その住宅が新築された日に応じて指定された金額(100万円~1,200万円)が住宅の価格から控除されます。
また、新築住宅については、面積が一定の要件を満たす場合に住宅の価格から1,200万円(認定長期優良住宅は1,300万円)が控除されます。
5-2.宅地を取得した場合の軽減措置
令和9年(2027年)3月31日までに取得した宅地については、固定資産税評価額の2分の1を課税標準とします。
また、住宅用の土地を取得して、その土地に建つ住宅が軽減措置の対象であるなど一定の要件を満たす場合は、不動産取得税の税額が減額されます。
減額される税額は、次のいずれか多い方の金額です。
- 45,000円
- 土地1㎡あたりの価格×1/2×住宅の床面積の2倍(上限200㎡)×3%
6.不動産の相続で相続税以外に納税義務がある税金は?
不動産に限らず遺産を相続した場合は、一定程度の財産があると相続税が課税されます。
財産にもし不動産があり、不動産を相続され取得じした場合、相続税以外にも納税すべき税金があります。
ここでは、相続税以外の納税義務がある税金について解説してまいります。
6-1.相続不動産を所有している間課税される固定資産税・都市計画税
相続した不動産を自己で所有する場合は、固定資産税が課税されます。
また、不動産が市街化区域にある場合は固定資産税に加え、都市計画税も課税されます。
税額は原則として下記のとおり計算します。
- 固定資産税=課税標準(固定資産税評価額)×1.4%(※)
- 都市計画税=課税標準(固定資産税評価額)×0.3%(※)
(※税率は自治体によって異なる場合があります。)
これについてもさまざまな軽減措置があります。
固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日時点の所有者に対して課税されます。固定資産税の納税通知書は、所有する土地・家屋の所在地のある市町村から毎年4~6月に発送されるのが一般的ですが市町村によりタイミングは異なります。
また、被相続人に未払いの税額がある場合は、相続人が納税義務を承継して代わりに納めなければなりません。
被相続人の死亡の翌年からは、登記された相続人のもとへ納税通知書が送られます。もし、相続登記ができていない場合は、相続人の全員が連帯して納税しなければなりません。
6-2.相続不動産を登記するときの登録免許税
相続した不動産の名義を変更するための登記を相続登記といいますが登記には、登録免許税がかかります。
税額は、対象の不動産の固定資産税評価額に税率をかけて求めます。
ただし、死因贈与、相続人以外への遺贈については税率が高くなります。
登録免許税 = 固定資産税評価額 ✕ 税率
- 相続、相続人への遺贈の場合 税率:0.4%
- 死因贈与、相続人以外への遺贈の場合 税率:2.0%
6-3.賃貸収入があるときの所得税
賃貸マンションなどを相続した場合、相続人は家主となり賃貸収入が得られます。
賃貸収入から管理に必要な経費を引いた部分は家主の不動産所得になり、所得税・住民税の課税対象となります。
賃貸収入による不動産所得は他の所得と総合し、申告義務がある場合は確定申告をしなければなりません。
所得税の税率は所得に応じて5%~45%であり、住民税の税率は一律10%です。加えて所得税の税額に対して2.1%の復興特別所得税が期限付きですが課税されます。
6-4.相続不動産を処分し利益が出た場合には譲渡所得税
相続した不動産を売却して利益が出た場合は、所得税・住民税の課税対象とされます。
売却益は、売却金額から被相続人から引き継いだ取得費を控除して求めます。
なお、相続から3年以内に売却した場合は、収めた相続税の一部を取得費に加算することができます。
不動産の売却益は、売却した翌年に確定申告が必要です。
不動産の売却益に関する税額は、他の所得と分離して計算します。
税率は、所得税・復興特別所得税と住民税を合わせて20.315%ですが、被相続人が取得したときから売却した年の1月1日までで5年を経過していない場合は39.63%になります。
税率
所得税・復興特別所得税・住民税 20.315%
所得税・復興特別所得税・住民税 39.63%※
※被相続人が取得したときから売却した年の1月1日までで5年を経過していない場合
7.まとめ
不動産取得税は、相続人が相続する場合は非課税ですが、相続人以外の人が特定遺贈によって取得したときは課税対象とされます。また、死因贈与や生前贈与なども不動産取得税が課税されます。
そのほか、不動産取得税以外の税金も不動産の相続によってさまざまな発生するケースがあります。
ご自身がどのケースに該当するのか事前に想定しておくことも大切です。
単に相続税だけを税金として考えるのではなく、全体を考え少しでも税金を抑えられるように資産を配分するなどの対応が必要となります。もしお悩みを抱えているようでしたら一度専門家へ相談されるのも良いでしょう。