『相次相続控除』10年以内に2回続いた相続で税金を大幅減額[相続のお話]

『相次相続控除』10年以内に2回続いた相続で税金を大幅減額

吉田健太と弟の翔は、二年前に父を亡くした。父の財産は、自宅と預貯金が中心で、相続人は母と二人の息子だった。このとき母は、配偶者の税額軽減の限度を超える財産を取得したため、相続税を納めることになった。そして今年、その母が病気で亡くなった。父の死から、わずか二年後のことだった。

悲しみが癒えないうちに、二次相続の手続きが始まった。母の財産は、一次相続で父から受け継いだ財産が大半を占めている。税理士が示した概算の相続税額を見て、兄弟は言葉を失った。「二年前にも払ったばかりなのに、また同じ財産に税金がかかるのか」。健太は電話口で思わず声を荒らげた。翔も、納税資金をどう用意すればいいのか途方に暮れた。母が長年大切にしてきた実家を手放すしかないのではないか、という考えも頭をよぎった。

そんなとき、健太が相続の本を読んでいて、気になる制度を見つけた。「相次相続控除」。短い期間に相続が続いたとき、前の相続で課された相続税の一部を、今回の相続税額から差し引ける制度だという。健太は居ても立ってもいられず、翔にも内容を伝えたうえで、すぐ税理士に連絡を取り、自分たちが当てはまるかどうかを尋ねた。

税理士は、資料を確認してから答えた。「相次相続控除は、今回の相続の開始前十年以内に、被相続人が相続で財産を取得し、そのときに相続税が課されていた場合に使えます。控除を受けられるのは、今回の相続人に限られます。お母さまは二年前に相続税を納めていますから、対象になります」。さらに、控除額は、前の相続からの経過年数に応じて減る仕組みだと説明した。一年経過するごとに、一割ずつ控除の割合が小さくなるという。

「今回は、一次相続から二年ですから、八割に相当する割合が残ります。もう少し時間が空いていたら、控除はもっと小さくなっていました」。税理士はそう言って、一次相続のときの申告書の写しを取り寄せ、母が納めた相続税額をもとに控除額を計算してくれた。控除は、各相続人が取得する財産の割合に応じて、それぞれの税額から差し引かれる。計算の結果、兄弟が納める相続税は、当初の概算から大きく減ることになった。

ただし、税理士は一つ注意も添えた。「もし一次相続のときに、お母さまが配偶者の税額軽減を使い切って、相続税がゼロだった場合は、この控除は使えません。前の相続で相続税が課されていたことが前提だからです」。兄弟は、母に相続税がかかっていたからこそ使えた制度だと、あらためて知った。条件を一つずつ確かめることの大切さを、二人は痛感した。

二次相続の申告書には、相次相続控除の計算書を添付した。申告期限までに、兄弟は納税資金を整え、無事に申告と納税を終えた。この控除は、申告書に記載しなければ受けられないことも教わった。気づかないまま申告していたら、本来減らせた税金を払い続けることになっていたかもしれない。健太は、制度の名前を知っているかどうかで、そして専門家に早めに相談するかどうかで、結果が大きく変わることを実感した。

葬儀の疲れも残る中での手続きだったが、兄弟は互いに励まし合って乗り切った。兄弟は、父と母が残してくれた財産を、無駄にせず次の世代へつなぐことにした。相続が続いたときは、まず前の相続の申告内容を確認し、控除や特例を見落とさないことが、遺族の負担を軽くする近道なのだと、健太と翔は今では考えている。

学びのボックス

相次相続控除とは今回の相続の開始前10年以内に、被相続人が相続で財産を取得し相続税が課されていた場合に、前の相続税の一部を今回の税額から差し引ける制度。
控除を受けられる人今回の相続の相続人に限られる。相続人でない人(遺贈のみを受ける人など)は対象外。
経過年数による逓減前の相続からの経過年数1年につき控除の割合が10%ずつ小さくなる。2年なら80%、早いほど控除は大きい。
前提となる条件前の相続で、今回の被相続人に相続税が課されていることが前提。配偶者の税額軽減で相続税がゼロだった場合などは控除額も生じない。
申告時の注意控除は申告書に記載して受ける。前の相続の申告書の写しを取り寄せ、計算書を添付する。専門家に早めに相談する。

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