[相続のお話] 相続した不動産、名義変更しないとどうなる?

相続した不動産、名義変更しないとどうなる?

村上哲夫(61歳)は、父が亡くなってから三年間、実家の名義変更を後回しにしていた。手続きが面倒だと思っていたことと、仕事が忙しかったことが重なり、ずるずると時間が経ってしまった。

    ある日、不動産会社から「実家の売却を検討されているなら、まず名義変更が必要です」と言われた。そこで初めて、哲夫は重い腰を上げて司法書士に相談した。

    司法書士から告げられた内容は、哲夫にとって衝撃的だった。「令和六年四月から、相続登記が義務化されました。相続によって不動産を取得したことを知った日から三年以内に、相続登記を申請しなければなりません。正当な理由なく期限を過ぎると、十万円以下の過料の対象になります」

    「三年以内というのは、いつから数えるんですか」と哲夫は聞いた。「相続開始を知った日、つまり通常は被相続人が亡くなったことを知った日から三年です。哲夫さんの場合、お父様が亡くなってから三年が経過しようとしていますので、早急に手続きを進める必要があります」

    相続登記の手続きには、戸籍謄本一式・遺産分割協議書・相続人全員の印鑑証明書・固定資産税評価証明書などが必要だ。これらを集めて法務局に申請する。司法書士に依頼した場合の費用は、不動産の評価額や件数によるが、数万円から十数万円程度が一般的な目安だ。

    「名義変更を放置するとどんな問題が起きますか」と哲夫はさらに聞いた。「まず、不動産の売却や担保設定ができません。名義が亡くなった方のままでは、所有者として法律行為ができないのです。また、相続人が亡くなるたびに相続人の数が増える『数次相続』が起き、将来の手続きが非常に複雑になります。さらに、土地が『所有者不明土地』となり、固定資産税の徴収や公共事業の妨げになることもあります」

    哲夫はすぐに手続きを依頼した。必要書類の収集に二週間、法務局への申請から登記完了まで約二週間かかったが、無事に名義変更が完了した。

    登記が終わった後、哲夫は売却の手続きを進めることができた。「もっと早くやっておけばよかった」と思いながら、司法書士に礼を言った。

   

この記事で学べること



相続登記の義務化は、長年放置されてきた所有者不明土地問題への対策として導入された。不動産を相続したら、まず名義変更を最優先に動くことが、将来のトラブルを防ぐ最善策だ。義務化の認知がまだ低いため、相続した不動産を持つ方は早めに確認しておきたい。

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