『代襲相続』孫や甥・姪への相続と注意点[相続のお話]

『代襲相続』孫や甥・姪への相続と注意点

【代襲相続の範囲と相続分の計算】子の系統は再代襲が続き、兄弟姉妹の系統は甥・姪まで。直系尊属に代襲はない

高橋美咲は、祖父・正雄の訃報を受け、実家の葬儀場に駆けつけた。祖母はすでに他界しており、正雄には三人の子がいた。長男の健一、次男の和夫、次女の恵子である。ところが、美咲の父である健一は、三年前に病気で亡くなっていた。美咲は、父を亡くした悲しみがまだ癒えないまま、祖父の死を迎えていた。親の遺産を相続する話し合いの場で、美咲は、自分に相続権があるのかどうか分からず、不安なまま司法書士の話を聞いた。

「ご安心ください。お父様の健一さんが、おじい様より先に亡くなっている場合、その子である美咲さんと弟さんが、健一さんに代わって相続人になります。これを代襲相続といいます」。司法書士はそう説明した。「子が先に死亡したり、相続欠格や廃除で相続権を失ったりした場合に、その子が代わりに相続する仕組みです。ただし、相続放棄をした場合は、その人の子には代襲されません」。

司法書士は、相続分の計算も示してくれた。「おじい様の相続人は、次男の和夫さん、次女の恵子さん、そして健一さんの代襲相続人である美咲さんと弟さんです。子の相続分は三人で等しく三分の一ずつ。健一さんの三分の一を、代襲相続人の二人で等分しますので、美咲さんと弟さんは、それぞれ六分の一ずつになります」。美咲は、父の代わりに祖父の財産を受け継げることを知り、胸が熱くなった。

司法書士はさらに続けた。「もし美咲さんも先に亡くなっていて、お子さんがいたら、そのお子さんが再び代襲します。子の系統、つまり孫、ひ孫と続く直系卑属は、再代襲が何代でも続きます」。一方、「親や祖父母などの直系尊属には、代襲相続はありません」とも付け加えた。父母が亡くなっていて祖父母が相続人になるのは、代襲ではなく、親等の近い人が先に相続するというルールによるのだという。

二年後、今度は独身で子のいない叔父の和夫が亡くなった。和夫の両親はすでに亡く、配偶者も子もいない。この場合、相続人になるのは、和夫の兄弟姉妹である。恵子と、すでに亡くなっている健一の代襲相続人として、美咲と弟が相続人になった。「兄弟姉妹が相続人になる場合も、その子である甥や姪までは代襲が認められます」と、司法書士は説明した。

和夫の相続分は、兄弟姉妹の恵子と健一の系統で、二分の一ずつに分かれた。健一の分である二分の一を、美咲と弟が等分し、それぞれ四分の一ずつになる。美咲は、同じ祖父の子どもたちの相続でも、立場によって計算が変わることに驚いた。親族の誰が相続人になるのか、自分一人の思い込みで判断してはいけないのだと、あらためて感じた。

司法書士は、もう一つ大事な注意を挙げた。「兄弟姉妹の系統は、甥や姪までで終わりです。もし弟さんが先に亡くなっていたとしても、弟さんの子には、再代襲は認められません。子の系統と違って、そこで途切れるのです」。さらに、兄弟姉妹の系統の相続人には遺留分がなく、子の系統の相続人には遺留分があるという違いも、あわせて説明された。

美咲は、戸籍謄本を集め、父が亡くなっていることや、自分が健一の子であることを示す資料を整えた。祖父の遺産分割協議は、美咲と弟、和夫、恵子の四人で話し合って円満にまとまった。二年後の叔父の遺産も、同じ流れで手続きを終えた。

遺産の整理の中で、美咲は、祖父の遺品から、幼い父と叔父たちが並んで写った古い写真を見つけた。美咲は弟とともに、その写真を仏壇に供えた。

この経験を通じて美咲は、代襲相続の仕組みが、子の系統と兄弟姉妹の系統、そして直系尊属で、まったく違うルールで動いていることを学んだ。親族の誰が相続人になるのかは、戸籍を確かめ、専門家に整理してもらうことが何より大切だと、美咲は身をもって理解した。

学びのボックス

代襲相続とは子が相続開始前に死亡したり、相続欠格・廃除で相続権を失ったりした場合に、その子(孫)が代わりに相続する仕組み。相続放棄は代襲の原因にならない。
代襲相続分の計算代襲相続人は、本来の相続人(被代襲者)の相続分を引き継ぐ。複数いる場合は、その相続分を人数で等分する。
子の系統は再代襲が続く子→孫→ひ孫と続く直系卑属の系統では、再代襲に制限がなく、何代でも代襲が続く。
兄弟姉妹の系統は甥・姪まで兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、その子(甥・姪)までは代襲するが、甥・姪の子には再代襲されない。兄弟姉妹の系統の相続人には遺留分もない。
直系尊属に代襲はない親や祖父母には代襲相続はない。父母が亡くなっていて祖父母が相続人になるのは、親等の近い人が先に相続するというルールによる。

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