『戸籍謄本』が広域交付で激変!全国どこでも即日取得
遠方の本籍地を持つ兄弟が、父の戸籍を1日で集め終えた劇的なスピードアップ
渡部隆と弟の直樹は、父の死後、相続手続きに必要な戸籍謄本の収集に頭を悩ませていた。父は転勤族で、若い頃に本籍地を何度か移していたため、出生から死亡までの戸籍を追うには、九州の小さな町、関西の中核市、そして現在住んでいた関東の市役所と、三つの自治体に個別に請求しなければならないと分かっていた。以前、祖母の相続を手伝った際に、遠方の役所に郵送で請求書を送り、返送を待つだけで一か月近くかかった経験がある二人は、今回も同じ苦労を覚悟していた。仕事の合間を縫って何通も請求書を書き、定額小為替を用意する煩雑さを思い出すだけで、隆は気が重くなっていた。
ところが銀行の窓口で相続手続きの相談をした際、担当者から思いがけない話を聞かされた。「戸籍法が改正されて、令和六年三月から戸籍謄本の広域交付が始まっています。最寄りの市区町村の窓口で、本籍地が別の自治体であっても、まとめて請求できるようになったんですよ」。隆は耳を疑った。これまで散々苦労してきた戸籍集めが、そんなに簡単になっているとは知らなかったのだ。
隆と直樹は早速、自分たちが住む市の窓口を訪れ、父の出生から死亡までの戸籍を一括で請求してみることにした。本人確認書類を提示し、請求書に父の氏名や本籍地の履歴を記入して提出すると、窓口の担当者はシステムを使って各地の戸籍情報を照会し始めた。九州、関西、関東と三つの自治体をまたぐ戸籍が、驚くほどスムーズに次々と出力されていく。かつて一か月がかりだった作業が、たったの一日で終わってしまったことに、二人は拍子抜けするほどだった。
ただし、窓口の担当者からはいくつか注意点も伝えられた。「広域交付で取得できるのは、本人、配偶者、直系尊属・直系卑属の戸籍に限られます。兄弟姉妹の戸籍は対象外なので、そちらが必要な場合は従来どおり本籍地への請求が必要です。また、コンピュータ化される前の非常に古い改製原戸籍の一部は、システムに未対応で広域交付の対象外になることもあります」。隆たちの場合は、直系である父の戸籍が対象だったため、幸い今回はすべて広域交付でまかなうことができた。
さらに、「広域交付は、請求者ご本人が窓口に来庁する必要があります。郵送請求や、代理人による請求には対応していません」との説明も受けた。もし直樹が仕事の都合でどうしても来庁できなければ、結局は個別に郵送請求をする必要があったところだった。今回はたまたま二人とも都合がついたため、スムーズに手続きを終えることができた。窓口の担当者からは「もし来庁が難しい場合は、これまでどおり本籍地の役所に郵送で請求する方法も残っていますので、状況に応じて使い分けてください」とも助言された。
戸籍の収集がわずか一日で完了したことで、隆と直樹はその後の相続登記や預貯金の解約手続きも、当初の見込みよりずっと早く進めることができた。以前の苦労を知っているだけに、この制度改正のありがたみを、二人は身にしみて感じている。
この経験を通じて隆は、法律や制度は少しずつ実生活を便利にする方向へ変わっていくものなのだと実感した。相続の手続きに直面したときは、古い知識にとらわれず、まず最新の制度を確認してみることの大切さを、隆は今回のことで学んだ。後日、同じように遠方の実家の相続で悩んでいた職場の同僚にこの話をすると、同僚も早速最寄りの役所に相談に行き、驚くほどスムーズに戸籍を集められたと感謝された。制度が変わったことを知っているかどうかだけで、これほど労力に差が出るものかと、隆は改めて情報の大切さを噛みしめている。
学びのボックス
| 戸籍謄本の広域交付とは | 令和6年3月の戸籍法改正により、本籍地が別の自治体であっても、最寄りの市区町村窓口でまとめて戸籍謄本を請求できるようになった制度。 |
| 対象となる戸籍の範囲 | 広域交付で取得できるのは、請求者本人・配偶者・直系尊属(父母・祖父母等)・直系卑属(子・孫等)の戸籍に限られる。 |
| 対象外となるケース | 兄弟姉妹の戸籍は広域交付の対象外。また、コンピュータ化前の一部の古い改製原戸籍もシステム未対応で取得できないことがある。 |
| 来庁が必須 | 広域交付は請求者本人が窓口に来庁する必要があり、郵送請求や代理人による請求には対応していない。 |
| 従来の請求方法も併存 | 来庁が難しい場合や兄弟姉妹の戸籍が必要な場合は、これまでどおり本籍地の役所へ郵送等で個別に請求する方法も残っている。 |
