『タワマン節税』完全終了!評価額補正率の計算バトル
【2024年新評価ルール】タワーマンション相続税評価の見直し。評価乖離率と市場価格6割の下限で想定外の税額に
岡田真司の父・勝彦は、生前、相続税対策として都心の高層タワーマンションの三十階部分の一室を購入していた。「タワーマンションの高層階は、実際の市場価格に比べて相続税評価額がずいぶん低くなる」という話を、勝彦は不動産会社の営業から聞き、多額の預貯金をこの一室に組み替えていたのだった。父の死後、真司はこの物件を相続することになったが、相続税の申告準備を進める中で、想定外の事態に直面した。父が生前「これで相続税の心配はいらない」と、どこか誇らしげに話していたことを、真司はよく覚えていた。
顧問税理士から提示された評価額は、真司が事前に聞いていた話よりもはるかに高いものだった。「以前の評価方法であれば、たしかにこのマンションの評価額は市場価格の三割程度にまで下がっていたはずです。しかし令和六年一月一日以降の相続からは、新しい評価ルールが適用されています」。税理士はそう切り出した。
「新しいルールでは、マンションの築年数、総階数、所在階、敷地の持分割合といった要素をもとに『評価乖離率』というものを計算し、これに基づいて評価額を補正します。特に、この補正によって算出される評価額が市場価格の六割に満たない場合は、六割の水準まで評価額を引き上げるという仕組みになっているのです」。真司は言葉を失った。父が期待していた大幅な節税効果は、この改正によってほとんど失われていたのだ。
「具体的には、このマンションのように築年数が浅く、高層階に位置し、敷地の持分割合が小さい物件ほど、評価乖離率が大きくなりやすく、結果として評価額の引き上げ幅も大きくなる傾向があります」。税理士の説明を聞きながら、真司は父が選んだ「高層階」という条件が、まさに評価額を押し上げる典型的な要素そのものだったことを知り、皮肉な気持ちになった。
税理士は、実際の計算過程を一つずつ示してくれた。従来の路線価や固定資産税評価額をベースにした評価額に、築年数や総階数などから算出した評価乖離率を掛け合わせ、さらに六割の下限に達しているかどうかを確認する。真司の父が購入した部屋は、結果として市場価格のおよそ六割に相当する評価額まで引き上げられることになった。以前の評価方法であれば三割程度で済んでいたことを考えると、実質的な税負担は二倍以上に膨らんだ計算になる。パソコンの画面に映し出された試算結果を見つめながら、真司はしばらく言葉を発することができなかった。
真司は、事前にきちんとシミュレーションをしていなかったことを悔やんだ。「父が生きていた頃に、この改正のことをもっと早く知っていれば、他の対策も一緒に検討できたかもしれないのに」。税理士は、「相続税対策としての不動産購入は、当時のルールが将来も続くとは限りません。制度が変わる可能性を織り込んで、定期的にシミュレーションをし直すことが重要です」とアドバイスしてくれた。
真司は結果を受け入れ、修正された評価額をもとに相続税の申告を進めた。想定より重い税負担にはなったものの、正確な計算に基づいて納得のいく形で手続きを終えることができた。この経験を通じて真司は、節税策として持てはやされる情報も、時代とともに前提が変わることを忘れてはならないと痛感した。相続対策は一度きりの決断で終わらせず、継続的に見直していくことの大切さを、真司は身をもって学んだ。申告を終えた後、真司は自分自身の資産運用についても、目先の節税効果だけでなく、将来の制度変更まで見据えて考えるようになった。
学びのボックス
| タワマン節税とは | 高層階のマンションは従来の評価方法だと市場価格に比べて評価額が低くなりやすく、この差を利用した相続税対策として広まっていた。 |
| 2024年新評価ルール | 令和6年1月1日以後の相続・贈与から、築年数・総階数・所在階・敷地持分割合をもとにした「評価乖離率」による補正が適用される。 |
| 市場価格6割の下限 | 補正後の評価額が市場価格の6割に満たない場合、6割の水準まで評価額を引き上げる仕組みになっている。 |
| 評価額が上がりやすい物件の特徴 | 築年数が浅く、高層階に位置し、敷地の持分割合が小さい物件ほど評価乖離率が大きくなり、評価額の引き上げ幅も大きくなりやすい。 |
| 制度変更を見据えた対策の重要性 | 相続税対策としての不動産購入は将来のルール変更を織り込みにくいため、定期的なシミュレーションの見直しが欠かせない。 |
