相続した不動産を売却する手順・必要書類・注意点・節税特例は?
相続した不動産を売却する手順・必要書類・注意点・節税特例は?
相続 不動産売却 必要書類
一戸建ての家や土地、マンションなど相続した不動産の売却では、分割や名義変更が必要となります。
加えて、マイホームの売却とは利用できる税金の特例が異なり、期限や要件を意識して売却することも必要です。
そうはいっても、不動産の相続を受ける機会など、普通の人にとっては一生に一度あるかどうかというイベントなので、具体的にどうしたら良いのか迷われている方も多いと思います。
そこでこの記事では、相続した不動産の売却を検討中の売主のために、
相続した不動産を売却したときの流れや分割方法
名義変更と必要書類
相続した不動産を売却する際の注意点
といった基本的な知識をわかりやすく紹介していきます。
1.相続した不動産を売却するまでの流れ
相続した不動産を売却するまでの流れ
まずは、一戸建ての家やマンション、土地など、相続した不動産売却の流れについて解説します。
相続が発生してから心の整理をつけるのは大変ですが、家の相続手続きには期限があり、まず、相続してから3か月以内に遺言書の有無、遺産や債務の有無を確認し、相続するのか、相続放棄するのか決めなければなりません。
相続した不動産売却に関係する各手続きの期限について順番にご紹介します。
1-1.相続の各手続きの期限
相続の各手続の期限は下表の通りです。
手続名 内容 期限
相続放棄 プラスの財産もマイナスの負債もすべて放棄すること 相続開始を知った日から3ヶ月以内
限定承認 相続するプラスの財産の限度内でマイナスの負債を相続すること 相続開始を知った日から3ヶ月以内
準確定申告 被相続人(他界した人)の1月1日から他界したまでの所得を確定申告すること 相続の開始を知った日の翌日から4か月以内
相続税の申告と納税 相続税を申告して納税すること 相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内
遺産分割協議 相続人同士で遺産の分割方法をきめること 期限の定めなし
相続した不動産を売却するには、家の名義変更が必要です。
遺言書があれば原則として遺言書に従い名義変更を行います。
遺言書がなく、かつ、特定の相続人に引き継がせたい場合は、遺産分割協議を行います。
遺産分割協議には特に期限の定めはありません。
不動産を売却して相続税を納税する場合には、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月までに現金化する必要があります。
1-2.名義変更後~売却までの流れ
遺言書や遺産分割協議を経て相続人が決まったら、名義変更を行います。
名義変更後の売却までの流れは以下の通りです。
名義変更後の売却までの流れ
相続物件の名義変更から引渡までの間は、概ね6ヶ月程度の時間を見込んでおく必要があります。
不動産相続に必要な手続きについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
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2.相続した不動産の名義変更の必要書類
相続した土地や一戸建て、ビル、マンションなどの不動産を売るためには名義変更が必要ですが、名義変更に必要な書類を紹介します。
名義変更方法 必要書類
法定相続
被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本
被相続人の除住民票
相続人全員の戸籍謄本
相続人全員の住民票
固定資産税評価証明書
相続関係説明図(任意)
遺言による分割
遺言証書
遺言者の死亡事項の記載のある除籍謄本
遺言により相続する相続人の住民票
固定資産税評価証明書
受遺者の戸籍謄本
相続関係説明図(任意)
遺産分割協議による分割
遺産分割協議書(相続人全員自署・実印押印・印鑑証明書添付)
被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本
被相続人の除住民票
相続人全員の戸籍謄本
相続人全員の住民票
固定資産税評価証明書
相続関係説明図(任意)
遺言証書が自筆遺言の場合には、法務局に提出する前に家庭裁判所で検認を行うことが必要です。
検認とは、家庭裁判所による遺言証書の存在および内容の確認のことを指します。
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3.不動産売却のための必要書類
相続した土地や家などを売るために、売主は物件購入時の重要事項説明書や登記簿謄本、土地測量図などの必要な書類を揃えなくてはなりません。
実家の土地や家屋を相続した場合、書類が足りないことやどこに保管しているのかわからなくなることもあるため、早いうちに探しておくとスムーズです。特に境界線が確定していない場合、測量を行ってから売ることになるため、早め早めに準備してください。
不動産の売主が用意する必要書類は以下の通りです。マンション、一戸建て、土地など物件種別ごとに必要な書類が異なりますので、ご注意ください。
▼不動産会社に売却を依頼するときに必要な書類
チェック 書類 マンション 一戸建て 土地
登記簿謄本または登記事項証明書 ○ ○ ○
売買契約書 ○ ○ ○
物件購入時の重要事項説明書 ○ ○ ○
登記済権利書または登記識別情報 ○ ○ ○
土地測量図・境界確認書 ○ ○
固定資産税納税通知書および固定資産税評価証明書 ○ ○ ○
物件の図面 ○ ○
設備の仕様書 ○ ○
建築確認済証および検査済証 ○
建築設計図書・工事記録書 △ △
マンションの管理規約または使用細則 ○
マンション維持費関連書類 ○
耐震診断報告書 △ △
アスベスト使用調査報告書 △ △
▼買主に引き渡しをするときの必要書類
チェック 書類 マンション 一戸建て 土地
本人確認書類 ○ ○ ○
実印 ○ ○ ○
印鑑証明書 ○ ○ ○
住民票 △ △ △
銀行口座の通帳(銀行振り込み先情報) △ △ △
ローン残高証明書またはローン返済予定表 △ △ △
物件のパンフレット △ △ △
売った後に関わることですが、物件購入当時の売買契約書など購入金額がわかるものがあると、特例を申請して節税につなげられることもあります。不動産売却に必要な書類の中でも、お金に関わる書類は特に取り扱いに注意してください。
もし、必要書類がわからなくなってしまっても、契約をした不動産会社が教えてくれます。
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4.相続した不動産の分割方法
一戸建てやマンション、土地などの不動産は現金と違い、すぱっと平等に分割することが難しいものなので、分割の仕方についても学んでおくのがベターです。
相続した不動産の分割方法には、「現物分割」、「換価分割」、「代償分割」、「共有分割」の4種類があります。
現物分割 換価分割
代償分割 共有分割
4-1.現物分割
「現物分割」とは、被相続人(他界した人)の現金や車、不動産などの財産を現物でそれぞれの相続人に分ける分割方法です。
不動産を単独所有とできるメリットがありますが、法定相続割合で公平に資産を分けることが難しいというデメリットがあります。
4-2.換価分割
「換価分割」とは、不動産などの遺産を売却して得た現金を分割する方法です。
法定相続分で公平に分けることができるメリットがありますが、売却の手間がかかるというデメリットがあります。
4-3.代償分割
「代償分割」とは、財産を多く相続した相続人が、他の相続人にお金(代償金)を支払うことで不公平感を調整する分割方法です。
特定の方に不動産を引き継げるメリットがありますが、引き継ぐ相続人がポケットマネーから代償金を支払うため、経済的な負担が重いという点がデメリットとなります。
4-4.共有分割
「共有分割」とは、遺産を主に法定相続割合で共有する分割方法です。
共有分割は、法定相続分で公平に分けられるというメリットがありますが、放っておくと二次相続、三次相続で所有者が雪だるま式に増え、多人数共有物件となって、将来、売却しにくくなるという点がデメリットとなります。
以上の4つの分割方法のうち、相続した不動産を売却する場合には、「換価分割」または「現物分割」を選択することが一般的です。
5.名義変更の方法
名義変更の方法相続した不動産の売却では、売主を明確にするために名義変更が必要です。現段階では、名義変更は義務ではありませんが、予定では2024年4月を目途に義務化されます。名義変更の義務化は、所有者不明土地問題を解決するためです。
名義変更の仕方には、主に「法定相続」、「遺言による分割」、「遺産分割協議による分割」の3種類があります。
5-1.法定相続
法定相続とは、法定相続割合で共有のまま名義変更することです。
相続した不動産を売却し、現金を相続人間で公平に分けたい場合には法定相続によって共有名義のまま売却することが適しています。
5-2.遺言による分割
遺言による分割は、遺言書がある場合に行います。
遺言書がある場合は、原則として遺言に従って名義変更を行いますが、遺言とは異なる内容で名義変更したい場合には、遺産分割協議を行うことが必要です。
5-3.遺産分割協議による分割
遺産分割協議とは、相続後に相続人間で遺産の分割方法を決める話し合いを指します。
遺産分割協議は、「遺言書がなく法定相続以外の方法で分割したいとき」や「遺言書があっても遺言書とは異なる方法で分割したいとき」に行います。
遺産分割協議を成立させるには相続人全員の同意が必要です。
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6.相続した不動産を売却する際の注意点
相続した不動産を売却する際の注意点は、主に以下の8点です。
スムーズに高く売ってくれる不動産会社を探す
共有名義の売却は全員の同意が必要となる
単独登記型は贈与にならないようにする
親の家に住む場合と住まない場合では税金特例が異なる
売却期限は3年以内が目安となる
取得費は親の購入額を引き継ぐ
所有期間は親の購入日を引き継ぐ
取得費が不明の場合は代替資料を探す
それではひとつずつ見ていきましょう。
6-1.スムーズに高く売ってくれる不動産会社を探す
相続した不動産を売却するには、スムーズに高く売ってくれる不動産会社を探すことが一番の注意点です。
相続した不動産は、「相続税の納税」や「特例を使える時期」に期限があります。
期限内にスムーズに売却するには、売却に慣れた不動産会社に依頼することがポイントです。
ただ、不動産会社には「賃貸仲介が主業」であったり、マンションの売買だけを重点的に行うなど、会社によりかなり特性が異なるため、どの会社が相続不動産の売却に強いのか、見抜くことは極めて困難といえるでしょう。
6-2.共有名義の売却は全員の同意が必要となる
共有名義の不動産の売却は共有者全員の同意が必要となる点が注意点です。
共有者全員の同意でポイントとなるのは、「売ること自体の同意」と「価格の同意」になります。
売ること自体に全員の同意が取れたら、次に問題になるのが価格の同意です。
価格の同意を得るには、共有者全員で最低売却価格を決めておくことがポイントとなります。
最低売却価格とは、「いくら以上なら売る」という売却の最低ラインのことです。
最低売却価格を決めておくと、例えば購入希望者から値引き要請があった場合、スムーズに意思決定がしやすくなります。
複数の査定結果の中には低めの価格も出てきますので、一番低い価格を参考にしながら最低売却価格を決めておきましょう。
相続した不動産を共有する場合の手続きや注意点については、こちらの記事で詳しく解説しています。
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6-3.単独登記型は贈与にならないようにする
単独登記型による売却は贈与にならないようにすることが注意点です。
不動産を売却して現金で分割する換価分割には、共同登記型と単独登記型の2種類があります。
共同登記型とは、一旦、不動産を共有で持ち、共有のまま売却する方法のことです。
分割の仕方としては、法定相続を選択することになります。
それに対して、単独登記型とは、一旦、不動産を特定の相続人が単独所有し、特定の相続人が売却した後、そのお金を他の相続人に分配する方法のことです。
分割の仕方としては、遺産分割協議を選択することになります。
共同登記型では、共有物件の売却となるため、売買契約時に原則として共有者全員の立会いが必要です。
そのため、例えば相続人の1人が海外に住んでいる場合などは、共同登記型では不都合が生じます。
一方で、単独登記型では、単独所有物件の売却となるため、所有者本人だけで売却手続きを進めることが可能です。
意思決定もスムーズであり、相続人が遠方に分散している場合には単独登記型はメリットがあります。
ただし、何も対策をせずに単独登記型で売却すると、所有者が受け取った現金を他の相続人に配分する行為が贈与とみなされてしまいます。
そこで、単独登記型でお金の配分が贈与とみなされないようにするには、遺産分割協議書に換価分割目的で遺産を取得することを明記しておくことが必要です。
単独登記型を選択する場合には、遺産分割協議の時点で「売却方法と分割方法」をセットで決めるようにしてください。
6-4.親の家に住む場合と住まない場合では税金特例が異なる
親の家に住む場合と住まない場合は税金特例が異なる点が注意点です。
相続した親の家に相続人(売主となる子供など)が住むと利用しやすい複数の特例があるため、売却時の税金を節税しやすくなります。
それに対して、相続した親の家に相続人が住まないと利用しにくい特例しかないため、売却時の税金が節税しにくいという特徴があります。
親の家に引き続き子供が住み、その家を売却する場合の扱いはマイホームの売却と同じです。
マイホームの売却は、なるべく税金を発生させないようにする政策的な配慮があり、利用しやすい複数の節税特例が用意されています。
一定の要件を満たすマイホームの売却では、以下の5つの特例を利用できる可能性があります。
「居住用財産」とは、マイホームのことです。
特例名称 国税庁HP
3,000万円特別控除 No.3302 マイホームを売ったときの特例
所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例 No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
特定の居住用財産の買換え特例 No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例
居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 No.3370 マイホームを買換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
一方で、相続した親の家に相続人が住まない場合、以下の2つの特例が利用できる可能性があります。
特例名称 国税庁HP
取得費加算の特例 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続空き家の3,000万円特別控除 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
「取得費加算の特例」とは、相続税を納税した人だけが利用できる特例です。
「相続空き家の3,000万円特別控除」とは、一定の要件を満たした戸建てを売却する場合に利用できる特例となります。
なお、節税を目的に親の家に一時的に住んで、居住用財産の特例を利用することはできません。
国税庁は、居住用財産の特例を利用できない場合として、以下のようなケースを挙げています。
この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋
居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋
別荘などのように主として趣味、娯楽又は保養のために所有する家屋
出典:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
居住用財産の特例を利用するには、除票住民票の提出が必要です。
除票住民票とは、他の市町村への引っ越ししたときに抹消された住民票のことを指します。
居住用財産の特例は、確定申告時の提出資料によって一時的な居住であることが推測できるようになっています。
3,000万円特別控除については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【税金対策】自宅や相続空き家の売却時にかかる税金と特別控除を解説
自宅(マイホーム)を売却したときには、印紙税や登録免許税、仲介手数料に
6-5.売却期限は3年以内が目安となる
相続した不動産の売却期限は3年以内が目安となるという点が注意点です。
理由としては、相続不動産で利用できる2つの特例の期限は、主として3年を目安としているからです。
それぞれ特例の適用期限は下表の通りです。
特例 適用期限
取得費加算の特例 相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却(相続開始のあった日の翌日から3年10ヶ月以内)
相続空き家の3,000万円特別控除 相続の開始のあった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却
上記の2つの特例の期限は若干の差があり、いずれも3年を少し過ぎても間に合います。
ただし、不動産の売却には名義変更から引渡まで半年以上の時間がかかります。
3年を過ぎたらすぐに期限が到来してしまいますので、まずは3年以内を目指して売却することがポイントです。
取得費加算の特例を利用するには、以下の要件を満たすことが必要となります。
相続や遺贈により財産を取得した者であること。
その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。
最大のポイントは、利用できる人が「相続税が課税されていること」という点です。
相続税が課税されている人は少ないので、取得費加算の特例はなかなか利用できない特例となっています。
また、相続空き家の3,000万円特別控除が利用できる家屋の主な要件は、以下の通りです。
相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋であること
昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
区分所有建築物(マンション等)以外の家屋であること
相続の開始直前においてその被相続人以外に居住していた者がいなかったこと
相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと
家屋を取り壊さずに売る場合、売却時において、その家屋が現行の耐震基準を満たしていること
相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
ポイントとしては、「昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること」と「区分所有建築物(マンション等)以外の家屋であること」の2点です。
「昭和56年5月31日以前に建築された家屋」しか利用できないため、それ以外の建物は利用できないことになります。
相続空き家の3,000万円特別控除を利用するにあたっては、「耐震リフォームをしてから売却する」のと「取り壊してから売却する」という2つのルートがあるという点がポイントです。
相続空き家の3,000万円特別控除
戸建ての場合、耐震リフォームの相場は500万円程度、取り壊し費用の相場は150万円程度ですので、一般的には取り壊して売却した方が安く済みます。
相続空き家の3,000万円特別控除を利用する場合、耐震リフォームまたは取り壊しのいずれか一方が必要となることが多いです。
相続空き家の3,000万円特別控除に関しては、「3,000万円控除は相続でも使えるの?賢く節税する方法を解説」でも詳しく解説していますので、あわせて参考になさってください。
6-6.取得費は親の購入額を引き継ぐ
相続不動産の取得費は親の購入額を引き継ぐという点が注意点です。
個人が不動産を売却したときは、譲渡所得を計算します。
譲渡所得とは、以下の計算式で求められる売却益のことです。
譲渡所得 = 譲渡価額※1 - 取得費※2 - 譲渡費用※3
※1譲渡価額とは売却価額です。
※2取得費とは、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額になります。
※3譲渡費用は、仲介手数料や印紙税など、売却に要した費用のことを指します。
上記の計算式の中で「取得費」というものが登場します。
取得費とは、親が購入した不動産の額です。
土地については購入額をそのまま用い、建物については購入額から減価償却費を控除した価額を取得費とします。
取得費 = 土地取得費 + 建物取得費
= 土地購入額 + (建物購入額 - 減価償却費)
よって、相続した不動産を売却するには、まずは親が不動産を購入した時点の売買契約書を探し出すことから始めましょう。
どうしても売買契約書が見つからず、取得費が不明の場合については、「6-8.取得費が不明の場合は代替資料を探す」で解説します。
取得費や仲介手数料など、不動産売却の費用について知りたい方は関連記事をご覧ください。
不動産売却でかかる8つの費用めやすと計算方法をやさしく解説
この記事では、不動産売却でかかる費用と計算方法について解説しています。
6-7.所有期間は親の購入日を引き継ぐ
相続不動産の所有期間は親の購入日を引き継ぐというのが注意点です。
譲渡所得が発生した場合、税金は譲渡所得に税率を乗じて求められます。
税金 = 譲渡所得 × 税率
税率は、所有期間によって異なります。
売却する年の1月1日時点において所有期間が5年超のときは「長期譲渡所得」、1月1日時点において所有期間が5年以下のときは「短期譲渡所得」と呼ばれます。
所有期間は親の購入日を引き継ぐ
長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率は以下の通りです。
所得の種類 所有期間 所得税率 住民税率
短期譲渡所得 5年以下 30% 9%
長期譲渡所得 5年超 15% 5%
復興特別所得税の税率は、所得税に対して2.1%を乗じます。
税率は長く所有している長期譲渡所得の方が低く、節税できるという点がポイントです。
所有期間は親の所有期間を引き継ぎますので、例えば親が既に5年超の所有期間を有していれば、相続後、すぐに売却しても長期譲渡所得の税率が適用されることになります。
6-8.取得費が不明の場合は代替資料を探す
取得費が不明の場合は代替資料を探すことが注意点です。
取得費が不明な場合には、概算取得費というものを用います。
概算取得費とは「譲渡価額の5%」です。
概算取得費を用いてしまうと、取得費が小さくなってしまうため、譲渡所得が大きく計算されてしまいます。
そのため、概算取得費を用いてしまうと、税金が高くなってしまうのです。
取得費が不明の場合は代替資料を探す
そこで、取得費が不明な相続不動産の売却で節税するには、取得費を証明する代替となる資料を探すようにします。
取得費の代替になる資料とは、主に以下のようなものが挙げられます。
【取得費の代替になる資料】
新築物件の場合、当時の販売ディベロッパーから購入当時の売買契約書の写しをもらう
当時仲介してくれた不動産会社や売主から購入当時の売買契約書の写しをもらう
通帳の出金履歴から購入額を推測する
住宅ローンの金銭消費貸借契約書から購入額を推測する
抵当権設定額から購入額を推測する
一般財団法人日本不動産研究所が公表している市街地価格指数から土地の取得費を算定する
一般財団法人建設物価調査会が公表している着工建築物構造別単価から建物の取得費を算定する
上記のような資料が揃えられる場合、後から否認されないためにも、あらかじめ税務署に相談することがポイントです。
まとめ
いかがでしたか。
「相続した不動産の売却」について、基本知識を解説してきました。
相続した不動産の売却では、納税や売却で利用できる特例に期限があります。
また、名義変更に必要な書類は、法定相続や遺産分割協議による分割等の分割の仕方によって若干異なります。
それぞれのケースにあわせて、確認と準備を進めてください。l