『遺言書保管制度』で死亡時の自動通知サービス開始!
死亡届の提出時点で指定した相手に自動通知が届き、隠蔽・放置リスクをゼロにする最新サービス
田中翔太は、一人暮らしをしていた叔父の博文が亡くなったという知らせを、市役所からの電話で受けた。博文には妻も子もおらず、身寄りといえば甥である翔太くらいのものだった。突然の訃報に戸惑いながらも、翔太は葬儀の手配や役所への届け出など、慌ただしく動き回っていた。子供の頃、正月になると必ず顔を出していた叔父の家を思い出しながら、翔太は静かに悲しみを噛みしめていた。
葬儀を終えて数日後、翔太のもとに一通の封筒が届いた。差出人は法務局。「遺言書保管所からのお知らせ」と書かれたその封筒を開けると、「博文様が遺言書保管制度により法務局に預けられた自筆証書遺言書について、あなたが遺言書情報証明書の交付を請求できる旨をお知らせします」という内容が記されていた。翔太は驚いた。叔父が遺言書を書いていたことも、それを法務局に預けていたことも、まったく知らなかったからだ。
不思議に思った翔太は、司法書士に相談してみることにした。「これは『指定者通知』という制度によるものです。法務局に自筆証書遺言書を保管してもらう際、遺言者はあらかじめ、自分が亡くなったことが確認された時点で通知を受け取る相手を指定しておくことができます。博文様は、翔太さんを通知の相手として指定していたのだと思われます」。司法書士はそう説明してくれた。
「以前は、遺言書の存在を知らないまま、相続人が何年も気づかずに放置してしまったり、最悪の場合、遺言書の存在自体を隠されてしまったりするケースも珍しくありませんでした。しかしこの通知制度があれば、法務局が死亡の事実を公的なデータで確認した時点で、指定された方に自動的にお知らせが届く仕組みになっています。遺言者の意思が、確実に相続人へと届けられるようになったのです」。司法書士はさらに、この通知先には複数の人を指定することもでき、遺言者が信頼する相手を柔軟に選べるようになっている点も付け加えてくれた。
翔太は、叔父が生前、自分のことを気にかけて、こうした準備をしてくれていたことに、胸が熱くなった。もし今回の通知がなければ、遺言書の存在に気づかないまま、法定相続分どおりの分配で終わっていたかもしれない。あるいは、他の親族が遺言書の存在を知りながら、都合よく黙っていたということも、制度上はあり得たはずだった。身寄りの少なかった叔父にとって、この制度がどれほど心強い備えになっていたかを、翔太は改めて実感した。
翔太は司法書士のサポートを受けながら、法務局で遺言書情報証明書の交付を請求した。証明書には、博文が生前、翔太に自宅の不動産と預貯金の大半を遺す意思が、丁寧な文字で記されていた。家庭裁判所での検認手続きも、法務局に保管されていた遺言書であれば不要とされており、翔太は思いのほかスムーズに相続手続きを進めることができた。検認手続きが不要になる分、精神的にも時間的にも余裕を持って、叔父を偲ぶ時間を確保できたことも、翔太にとってはありがたいことだった。
この経験を通じて翔太は、遺言書保管制度が単に遺言書を安全に預かるだけの仕組みにとどまらず、遺言者の想いを確実に届けるための仕組みへと進化していることを実感した。独り身の高齢者が増える中で、こうした通知機能が果たす役割の大きさを、翔太は身をもって知ることになった。手続きが一段落した後、翔太は自分自身も将来のために遺言書を書き残しておこうと考えるようになり、法務局の窓口で保管制度の相談を予約した。
学びのボックス
| 自筆証書遺言書保管制度とは | 自分で書いた遺言書を法務局(遺言書保管所)に預けられる制度。紛失や改ざん、隠匿のリスクを防げる。 |
| 指定者通知とは | 遺言者があらかじめ指定した人に対し、遺言者の死亡が公的データで確認された時点で、法務局から遺言書が保管されている旨が自動的に通知される仕組み。 |
| 複数人の指定が可能 | 通知を受け取る相手は一人に限らず、遺言者が信頼する複数の人を指定しておくこともできる。 |
| 検認手続きが不要 | 法務局に保管されている自筆証書遺言書は、家庭裁判所での検認手続きが不要とされ、相続手続きをスムーズに進められる。 |
| 独居高齢者にとっての意義 | 身寄りが少ない一人暮らしの高齢者でも、遺言者の意思を確実に相続人へ届けられる仕組みとして活用できる。 |
